メキシコの大地に抱かれて / 水墨画を描く父、島田正治

メキシコの大地に抱かれて

水墨画,島田正治,メキシコ

  書   名  : メキシコの大地に抱かれて

  サブタイトル: 水墨画を描く父、島田正治

  カテゴリー : エッセイ

  著   者  : 佐藤 はるひ

  定   価  : 1,575円(本体1500円+消費税)

  発 行 元 : JPS出版局

  発 売 元 : 太陽出版

  造   本  : 四六判/並製(ソフトカバー)

  本文ページ数: 208頁

  ISBN978-4-88469-498-2

 


内容紹介

芸術家とその娘

 メキシコで活躍する日本人画家、島田正治。

 その娘として生まれた著者、佐藤はるひが綴ったウチのお父さん。

 ユーモアとペーソスが織り成すエッセイは読む人に微笑みをもたらしてくれる。

目 次

第1章 主夫の時代

第2章 素敵な出会いに恵まれて

第3章 いざ、メキシコへ

第4章 父のメキシコ、私のメキシコ

著者(佐藤はるひ)の横顔(著者略歴)

1963年4月8日、墨画家・島田正治の長女として生まれる。

約20年にわたる教員生活を経て、ただいま人生の第2ステージを構築中。

川崎市宮前区在住。

イントロダクション

第1章/第1話 主夫の先駆け

 

 「私の父はちょっと風変わりな男性です」という書き出しで始まる一通の投書。昭和51年(1976年)の4月11日、毎日新聞の家庭面『みんな集合』欄に、私の文章が掲載された。中学一年生になったばかりの春のことだ。

 昼間、父は家にいて水墨画を描いていた。そのかたわら、外で働く母の代わりに洗濯、掃除、育児などをこなしていた。今でいう主夫のハシリだ。

 私たち姉妹がまだ幼いころは仕事の邪魔をしたので、前に私を抱っこし、背中に妹を負んぶしてスケッチに出かけたり、部屋の中をベビーベッドの柵で囲って絵を描くスペースを確保したりと、日々苦労したそうだ。

 当時はまだ、女性が家にいて家事をおこなうのが一般的な世の中だった。父が家にいて母の代わりをしている家庭をいうのは実に珍しかった。

 我が家では学校から帰るといつも父が「おかえり」といって出迎えてくれた。「今日はどうでしたか?」と必ず聞いてくるから、私はまず初めに父に何でも話すようになった。母のいない寂しさというものも感じたことがない。父が家にいるのが当たり前だったので、我が家がよその家と少し違うと気づいたのは、もっとずっと後になってからだ。

 父は、自分の職業を記すときには、自由業、画家と書いていた。私はその字面や「がか」という響きが好きで、「ウチのお父さんは画家なんだよ。墨を使った絵を描いているんだよ」と友達にいっていた。

 父の友人にも絵や小説、演劇に携わっている人はたくさんいた。私の周りには自由業の人たちがあふれていたが、世の中全体では自由業の人はそう多くはなかった時代だ。

 そのことを知ったのも中学生くらいになってからだと思う。

 父はよく「お父さんは今でいう主夫の先駆けですよ」と自慢する。確かに幼稚園の遠足の記念写真で、黒のコートに身を包み、帽子をかぶって写っている男性は私の父だけだった。学校の授業参観で多くのお母さん方に混ざって、父親参観しているいつもウチだけだった。

 父は女性の中に一人でいても、わりと堂々としているように私には見えた。だが実は、こういった行事に参加するのはひどく苦痛で嫌だったと後に述べている。しかし、娘たちのためにやらざるをえなかったのだろう。家庭を大切にしてきた父に頭が下がる思いである。

 こういう父を持ち、他の家ではあまりないスタイルの家庭で育った私には、多分ウチならではの、個性豊かな感覚というものが身についていると思う。私なりのユニークな視点というものが体に備わってしまった。それはまさに破天荒な父に育てられ、人があまり経験しないことを実際に体験してきたからではないだろうか。

 私は今、父とのふれあいを思い出し、口に出すことが多くなった。あの投書が載ってから三十年。ずいぶんと月日は経ったが、幼いころの父との思い出は色あせることなく私の胸の中に生きつづけている。風変わりな男性である父の存在は、私の心の奥にどっしりと根付いている。

 父はいつも自分の信念を貫いてきた。仕事も家庭も子育ても決して手を抜かず、その中で娘たちを常に一人前の人間として扱ってくれた。そしてときには型破りな発想や行動で周囲を慌てさせる。いつも父を中心に、我が家はユーモアや笑いでいっぱいだった。

推薦の言葉

快心のトライ (山川 静夫/エッセイスト・元NHKアナウンサー)

 

 はるひさんとは、昭和61年度のNHK科学番組「トライ&トライ」で、いっしょに司会した仲です。

 明るく聡明なはるひさんは、スタッフみんなに愛され、番組の中ではトライヤーとして体当りのトライを試みていたのを、なつかしく想い出します。

 あれから20年たっても、はるひさんの、果敢なるトライは続いていたのですね。 

 自分の父親の慈愛は十分わかっていても、それをことばで表わすのは、なかなか難しいものですが、はるひさんはこのエッセイによってみごとに父親の正治さんを表現しました。

 よかったね、はるひさん、

 うらやましいよ、お父さん!

編集者より一言

推薦の言葉(高石左京)

水墨画,島田正治,メキシコ

 今も、メキシコで活躍する墨画家・島田正治さんの娘さんが書いた、お父さんにまつわるエッセイ。

 飄々と自然体で生きる島田正治さんの人間味あふれる生きざまと、それを支え続けるお母さんとの出会いと人生模様をペーソス溢れる文体で綴った、ほのぼのエッセイです。


レビュー

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